the girl with the dragon tattoo

「ドラゴンタトゥーの女」の試写会に行って参りました。


今回、運よく当選ハガキが届いたので、寒空の中、有楽町のフォーラムへ馳せ参じました。入場してみると、予想外に大規模な会場(Aホール)と豪華なセッティングに驚きました。中央の雛壇になんで花道が作ってあるの?何やら嫌な予感が漂いますが、満員の観衆とともに開演を待ちました。会場内には低くサウンドトラックが流れています。音響は良さそうね。
やがて司会者が現れ、仰々しい能書きとともに、ステージに今をときめくタレント書家の方を紹介しました。えっ?それって一体何の関係が?
やおら刷毛を持った作務衣の小柄な人物は、それから小半時かけてゆったりお絵かきをはじめました。観客一同の目が点になるなか、司会者が美辞麗句でひたすら煽り立てます。
「もうお分かりでしょう、皆様、ある生き物が今まさに生まれようと云々」
このへんで管理人はもうすべてがどうでも良くなり、トイレ休憩でもしようかと真剣に考え始めた時点で、最大音量でサントラ冒頭の「移民の歌」が鳴り響きました。
そして、中央のランウェイをH&Mのタイアップのチープなパンクの衣装を身に着けたモデル6名がシナを作って歩き出し、いちいちバカみたいにポーズを決めています。
ここで管理人は昨年の3月の某ヨシキのファッションショーを思い出し、心の底からぞっとしました。あの後で一体何が起こったと思ってるんだ、頼む、縁起でもないからやめてくれー!!
やっと書きあがった中央の竜の絵にCGを重ね、派手なライティングで演出をかましたショウを、それからしばらくの間見せられました。
あまりに臭い演出にめまいがして、あやうく昏倒しそうになった頃、やっと本日の主役が現れました。監督のデヴィッド・フィンチャーと主演女優のルーニー・マーラ嬢です。
監督はさすがに空気を読んで、「映画の本編がいいかげん長ったらしいんで、私のスピーチは短くしておこう」とコメントし、観客の笑いを誘っていました。白いドレスのマーラ嬢は「私もリスベットみたいにちょっと人見知りだからかしら?」とはにかんだ笑顔を見せていました。遠くて豆粒のようでしたが。
司会者がベラベラとストーリーを説明する中、サントラが淡々と流れ続けます。すごいわ、このサントラ、空気まで寒くさせてるわー。原作読んでない人か、見ても一度では理解できない人のための親切心かしらね。余計なお世話だよなあ・・・。
そしてやっと本編が始まりました。
荒涼たるスウェーデンの冬、老人のもとに、今年もまた押し花が送られて来ます。花を眺め、悲しみに沈む老人。
一方、政治ジャーナリストの主人公ミカエルは、自らの会員制経済紙のスクープ記事が元で、ヴェンネストレム社への名誉棄損で罰金刑を宣告されます。内部告発との触れ込みで掴んだネタが偽物で、彼は告発する相手に逆にハメられたのです。意気消沈する主人公。
そして、もう一人のヒロイン、リスベットは、自らの勤務する警備会社で、あるクライアントの弁護士と面会しています。ミカエルについての調査を依頼されたのです。
実はミカエルの調査を依頼したのは、スウェーデン財界のかつての大御所である、ヘンリック・ヴァンゲル老その人でした。彼はミカエルに、彼の身内にまつわる、40年前の忌まわしい事件の解決を依頼します。
表向きは彼の一族の評伝を書くという事にして、ミカエルは凍てつく冬の島に渡ります。一族の所有する豪邸の傍の、小さな東屋で寒さに震えるミカエルの前に、小さな客人が現れます。単に「ネコ」と呼ばれる小さな雉トラの雄猫は、ミカエルのパソコンや暖炉やベッドの中まで入り込み、彼をわずかに癒します。
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ヘンリック老の収集した執念の資料を漁るうち、彼は40年前の写真にある違和感を覚えます。失踪したヒロイン、ハリエットは、祭りのパレードの中に居た、ある人物を恐れて逃げ出したのです。それは一体誰なのか?
一方、リスベットは、幼年期に起こした事件が元で、成人後も保護観察の身の上でしたが、ある日、彼女を担当する老弁護士が発作で倒れます。そして、後任の弁護士は、恐ろしい悪魔でした。
彼女を女性として凌辱し、支配しようとしますが、リスベットはそれに恐ろしい復讐を加えます。
リスベットは、NINのTシャツを着た謎のハッカー仲間の力を借りて、ある仕掛けを施します・・・。
そして、調査に行き詰ったミカエルは、自らを調査していた女ハッカー、リスベットのアパートへ突入し、彼女をむりやり仲間に引き入れます。
リスベットは、「ソーシャルネットワーク」の主人公同様に、アスペルガー気質の孤高の天才として描かれています。他人との距離がうまく掴めず、トラブルを避けるため、自分自身をあえてハリネズミのような外見の鎧で覆った、ガラスのような繊細な心を持った人物であることが、次第に明らかになります。
奔放に見える彼女の性癖や行動も、実は彼女なりの美学と配慮であり、ミカエルはそれにとまどいながらも、彼女に次第に惹かれて行きます。
また、この映画は一部に、グロテスクな犠牲者の死体の写真や、リスベットのわずかなアンダーヘア、剥き出しの尻などの描写を含むため、公開時にはこれらに修正を加えて、R15での公開となるようですが、実に愚かなことだと思います。試写会で見た限りでは、まったく修正の必要は感じられませんでした。配給側に猛省を望みます。
呪われた支配者の一族には、偏屈な老人たちが雪の中に埋もれるようにしてひっそりと暮らしています。かつてナチスが北欧をも席巻したとき、この一族にもそれに心酔するものが現れました。それが、やがて忌まわしい事件の発端となりました。
この事件は、表向きはユダヤ民族(異邦人、移民たち)への蔑視のようですが、実は、原作の原題と同様に「ミソジニー(女嫌い)」の根深い闇が原因となっていました。
女性や弱者を蹂躙し、その生死を支配することによって、僅かな優越感を覚えるという、救いようのない卑屈な喜びが、この北欧の一族の優越感の元となっていました。
リスベットがミカエルに惹かれたのは、彼女が今までに知っていた、こういう性質の男たちとは、全く異なり、彼女をフェアに扱ってくれたからでした。
そして、リスベットは愛するミカエルの危機を救い、悪魔に最後の通牒を渡すことになります。
余談ですが、後半で、レディ・ガガのようにゴージャスに仮装した彼女は、別の意味で見事なアマゾネスのようでした。
管理人は原作を通読し、スウェーデン版の映画を見ましたが、こちらのリメイク版のほうが、はるかにリスベットの痛々しさ、ミカエルの甘い魅力、因業な人間関係などが見事に描写されていたと思います。
また、全編を通して、トレント・レズナー及びアッティカス・ロスの黄金コンビのざわめくような通奏低音が鳴り響いていましたが、はっきり言って、その存在を全く忘れ去るほど、音楽が場面の一部となり切っていました。映像としてのサントラの完成度は、ソーシャルネットワークよりもはるかに上だと思います。敵のアジトに潜入するシーンで低くうなり続ける、エアコンディショナーの音が地獄のように怖いようー。
リスベットのほのかな女心のシーンで流れるプリペアード・ピアノの爪弾き、最後に失意のリスベットが去っていくシーンで、HTDAのマリクイーンの澄んだ歌声が響きます。「その恋は本物なの?その愛は本当なの?」
恋人ともつれあうミカエルを尻目に、リスベットは再び闇の底に消えて行きます。
はっきり言います、原作を凌いでいます。
ぜひとも続編を作ってくださいな。リスベットの過去も明らかにしてください。
原作のリスベットより全然可愛いじゃないかあ、もう!
以下の雑誌に詳しいインタビューや記事が掲載されています。
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サントラと原作も必須です。
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ところで例のナチっ子の某乱射事件の犯人氏はお元気かしらね。北欧は定期的にこういうおかしいのが湧きやすいのかしらね。あんまり寒すぎるとよくないのかなあ。
PS: トレント様がエンヤ嫌いだってことがよーく判りました。コールドプレイ以外にも嫌いなものがあったのか。
http://insidemovies.ew.com/2011/12/22/the-girl-with-the-dragon-tattoo-enya/



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