gaga

Lady GaGaの横浜アリーナ公演に行って参りました。


会場の内外は既にイミテーションのガガであふれかえり、それを撮ろうと群がる男性や、得意気にポーズを決めるほとんど全裸に近いコスプレの女性など、カオスな状況になっていました。
オープニング・アクトの2番目のバンドは、マイケル・モンローを更に下世話にしたような騒々しいキャラで、カマっぽい声でこうMCしていました。「ガガが最初にアタシたちと一緒にブルックリンでライブをしたとき、お客はたったの12人だけだったわ。それがどう、今じゃあの子はスーパースターよ!」いや、実際にゲイかどうかは知りませんが。彼らはワールドツアーでも一緒に回っているし、アフターパーティーなどでも同席しているようですね。
http://www.myspace.com/semipreciousweapons
なんだかスタジオボイスのNYクラブカルチャー特集を思い出した。
今回、幸いにもスタンド席のかなり前方だったので、肉眼でガガの顔を確認することができました。アリーナのステージは紫の幕が引かれ、その前に白いプロジェクター用の幕が下ろされ、演出の舞台転換やオープニング前に映像が流されました。
ガガがポーズを決める映像は、どこか型式的で、ポップミュージックというよりも、ファッションショウのランウェイで流される物のような印象でした。
今回、ガガのステージを見ていて、ポップミュージックのライブとしては、個人的にかなり違和感を覚えました。それは、いわゆる「様式美への偏執」とでも言うべきものでしょうか。
古典的なゲイのカメラマンたちが作ってきた、近代から現代に至るファッション・フォトグラフィーの世界のパスティーシュ(剽窃)やミミック(模倣)からの記号が、ガガの過剰な装飾や様式的なダンス、ポーズなどの引用に溢れていました。
まず、セシル・ビートンの耽美的な貴族趣味。レースや、クリスタルを思わせるアイコンに身を埋めて、あたかもロシアの聖像(イコン)であるかのように登場したガガは、そのキッチュさから、ピエール&ジルの装飾過剰な写真のようにも見えました。
また、テレフォンなどのPVでも多用されていた、アメリカン・コミックやウォーホルなどの「大衆的なマス・イメージ」も連想されました。
そして何より顕著だったのが、そこかしこに見られる、「キリスト教的・カトリック的・ロシア正教的な」聖なる世界感からの引用でした。血の涙を流す天使の墓碑像や、雪のような聖母像のイメージなど。
そして、ストップ・モーションを多用した、歌舞伎や、昔懐かしいヴォーギング(マドンナなど)のような「決めポーズを多用した」ダンスの見せ方は、観客に、イメージを飽和させずに、強く印象づけることを狙っているかのようでした。
メイプルソープの猥褻な写真から抜け出てきたような、半裸のダンサー達は、濃いメイクで彩られ、ポップスのライブというよりも、相当に演劇的なステージを印象づけていました。彼らはステージの進行に合わせて寸劇やMCをして、長大なミュージカルを見ているようでした。
「これはあたしのモンスター・ボールよ」というガガの言葉どおり、モンスターの棲む森=ガガの育ったニューヨークを舞台に、文字通りの巨大な球体(ジャイロスコープか、ダヴィンチの描く球体のような)や、「舞踏会」を意味する「ボール」のダブル・ミーニングを意図しているようでした。
セットはブルックリンのネオン輝く猥雑な下町から、危険なサブウェイ、モンスターの棲む森へと場面転換して行きます。実際に鮟鱇のような巨大なモンスターが登場し、触手を伸ばしてガガを絡め取ろうとした矢先に、ガガの胸のビームで撃退されていました。
この鋼鉄のブラのギミックも、やはりマドンナとゴルチェの作品を連想させます。また、開演前のSEがマイケル・ジャクソンだったように、このステージ全体が「黄金期のポップスへのオマージュ」であるとも思われました。
ガガという、一人の24歳の女性のイメージは、会場に溢れるイミテーションのガガ達(リトル・モンスター)によって増幅され、鉄壁のダンスと冷徹な生バンドによって、その世界感が更に強固に完成されていたようでした。
デイヴィッド・ラシャペルがローリング・ストーン紙上でガガを何度か撮影していますが、彼もさまざまなイメージからの引用でアーティストを表現する人です。聖母のマドンナ、アイコンのボウイなど。今回、いみじくもガガは彼の写真を生身の3Dで体現しているかのようでした。
ガガを見ていると、シンディ・シャーマンの写真を思い出します。彼女も、映画のシーンなどを引用することによって、「自画像」に秘められたセクシャルな自己を開放していたアーティストでした。
ガガが次に出すアルバムがどのような世界感を持つのか、そして、それがどのような引用をわれわれに思い出させるのか、個人的にとても興味を引かれる対象であることは確かです。
GAGA


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限定版だそうです。
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